安否確認による開錠作業 警察署からの依頼編(沼津市)
そして第2弾。
今回も集合住宅は同じだが分譲マンションからだ。
電話があったのは所轄の警察署の刑事課から。
この仕事を始めて初めて警察から電話が来たときは別に何かあるわけではないがソワソワしてしまったものだが、業歴も30年となると相手によってストーリーが見えてくる。
この部屋に住む親族が元の依頼主だが、県外に住んでおり作業に立ち会えないため警察に連絡をしてきての安否確認となった。
「既に現場で警察官が待機してます」
ということで緊急出動、とは言っても赤色灯を付けるわけでもなく通常走行なんだけど。
建物的には30~40年は経ってるだろう。50~100世帯の大きな重量鉄骨の10階建ての集合住宅だ。
しかし、どの部屋も玄関はやたらと綺麗。
作業段取りに他の部屋を見たが、どうやら新しい建具にリフォームされていた。
玄関ドアだけでなく廊下に面した窓も今風のアルミサッシでピシッと閉まってる。
玄関には新聞受けやドアスコープは無く、室内からはインターホンのカメラで来訪者を見ることができる構造。
更にやらしいのが2ロックシリンダーで当然シリンダー開錠は不可。
壊すにもシリンダーがレバーハンドルに埋め込まれていて内筒を削っていくやり方でないと壊せない。
壊すのは最後の手段として窓さえ開けれれば、後は格子を外せば中に入ることができる。
しかし窓も2ロック掛かってそうだが、物は試しダメ元でクレセント開錠を試みたら開いた。
警察缶は
「どうやって中に入るんですか?」
もう体育会系だなあ、もっと柔軟に物を見てよ。
格子の半分を外し、少し煽ってやれば大人一人入るスペースはでき、警察官に臨場してもらった。
室内から時々声が聞こえたが間もなくして玄関から出てきた。
中で亡くなっていたようだ。
その事実を知ると異臭が周囲を包んだ。
リフォームされた玄関や窓は優秀なもので、温度を逃さないばかりか匂いも密閉していたのだ。
諸々の作業はここで中断し、復旧させたい格子もそのままの状態で窓だけ閉めた。
第一弾で立ち会った制服の警察官も権限はここまでとなり本署の刑事課の到着待ち。
30分ほどして白いワンボックスカーにウインドブレーカーを夏なのに着た刑事が到着。
なぜウインドブレーカーかと言えば、現場にいれば分かるが本当に匂いが生地に付着するほど強烈だし、万が一何かしらの液体が跳ねてもナイロンだったら染み込まない。
大工道具のジュラルミンのケースを肩に抱えてマスクをして現場へと入って行った。
そして簡単な事情聴取の後で遺体現場とは違う部屋だが、格子の修復に入った。
その際、足にビニールの履物で足跡を残さないように。。。
昨日の安否確認の時に警察官と世間話で死体処理作業の後で交番に戻ってもなんか匂いが消えないんだと言っていた。
僕はてっきりきつい匂いなので脳が覚えてしまって幻覚反応するのかと思っていた。
僕も現場を離れてからも匂いを思い出すようでその日はよく言う肉類は食べたくなくなる。
ただその警察官が言うには確かに脳が覚えてしまうこともあるかもしれないが、匂いが鼻の中に付着ししばらく残り香を嗅ぐいでるんじゃないかと言っていた。
僕ら鍵屋でも明らかに異臭がすればマスクをするのだが、それも通すほどのきつい匂い。
できればそういう仕事は立ち会いたくない。
作業後に実務があるので親族の方へ電話をした。
捜索状況は警察から正式に連絡が来るだろうが、心配してたので残念ながら中でお亡くなりになってましたと。
「それでも早目に見つけてくれてありがとうございました」
そう言ってもらえたのは何よりだった。
ただ具体的などんな風になってたかは、直接現場を見たわけでないので後で検証後に刑事課から電話があるはずと。
高揚してた気分が解き放たれた作業後だが、毎度清々しい気分にはなれないものである。